大切な刻
コンラッドの腕の中で目覚めると、時々すごく得した気分になる。
ゆっくり意識が浮上してきて、目を開けると目の前にコンラッドの寝顔がある。
大抵はコンラッドの方がおれより早く起きているので、寝顔なんて滅多に見ることはないのだけれど。
よく、寝てる・・・。
唇に触れてみたくて、腕をそっと動かす。
一体、どんなセンサーがついているのか知らないが、おれが起きているとわかると
コンラッドは目が覚めてしまうので慎重に、だ。
もう少しで触れると思った瞬間―
睫毛が震え、薄茶の瞳が開かれた。
「ユ、ーリ・・・?」
おれは、心の中で盛大にため息をついた。
あーぁ、起きちゃった。
コンラッドの瞳がおれの姿を捉え、ふっと笑みを浮かべる。
「おはよ、コンラッド」
「おはようございます・・・早かったんですね」
起きたばかりだというのに、コンラッドの目は涼やかで・・・
浮かべる笑顔も、清々しい。
寝起きなのに、なんだろうこの爽やかさは。
「今、起きたばかりだよ」
むく、と半身を起こし、手探りでシャツを探る。
えっと・・・どこだろ?
すると、ふわと背中にシャツが掛けられた。
「あ、ありがと」
袖を通すと、大きくて・・・コンラッドのものだってわかった。
「どういたしまして」
コンラッドは、にこ、と笑っておれの前髪をかき上げて、額にキスを落とした。
僅かにベッドを揺らしてコンラッドがベッドから抜け出し、身支度を整え始める。
その姿を、ベッドの上に座ってぼーっと見守る。
この時間が、いい。
緩む頬を隠すように両手で口元を覆うと長い袖口から、かすかにコンラッドのにおいがして
気恥ずかしくなる。
そして、ちら、とコンラッドの背中に視線を移し・・・
あ・・・
今朝はもうひとつ珍しいものを目にして小さく笑う。
得したなぁ、と思うもうひとつの瞬間だ。
シーツの海に足を取られないように気をつけてベッドを滑り降り、
「コーンラッド!」
コンラッドの背中に飛びつく。
突然抱きつかれたのにも関わらず、コンラッドはよろめくこともなく穏やかに声をかけてきた。
「どうしました、ユーリ」
「ん、あのね・・・」
おれは手を伸ばして、コンラッドの髪に触れた。
「コンラッド、寝癖ついてる」
ちょこん、とついた寝癖を撫でる。
いつも、きちんとしているコンラッドのこういう姿を見ると、
いいなぁ、と思う。
だって、きっとおれしか知らない事だから。
ヌ、、ノロアロ、キ、ヒヌリテ讀ホカレニ、ャニー、ッ、ホ、ャナチ、・遙「・ウ・・鬣テ・ノ、ャマモ、ニー、ォ、ケ、ホ、ャ、・ォ、・
。」
こういう、些細なことの発見が、本当どうしようもなく嬉しくて。
胸がぽかぽかするのだ。
薄い布越しに背中の筋肉が動くのが伝わり、コンラッドが腕を動かすのがわかる。
「あぁ・・・ここですね・・・ありがとうございます、ユーリ」
コンラッドの声は、少し照れたような感じだった。
「ん、どういたしまして」
背中に頬を押し当てる。
「ユーリ?」
布越しの体温。
そこに、昨夜のような激しさはなくて。
ただただ、優しく暖かい。
「もう少し、このままで」
腕を回し、コンラッドを抱きしめる。
コンラッドが、黙っておれの手に触れ、重ねてきた。
穏やかなひととき。
おれには、とても・・・。
大切な刻。
獅子の日!ということで、かっこいい次男をー・・・と思っていたら、
違う次男になりました。

『闇色天蓋花』からフリーとの事で強奪してきました。
獅子の日限定なんてもったいない!と感じるほど素敵な小説です。
まあさ様の小説には頭もあがりません;;
サイト名を押すとまあさ様のサイトに飛ぶことができます。
by Aya Kisaragi