Love for you.

今朝はいつもより遅く起きた。
時計なんてないから時間は正確には解からないけど、お天道様は空高く輝いている。
嫌だと言っても毎朝来ていたコンラッドが起こしに来なかったからだ。
「なんでだー?」
元々働かない頭だけど、更に寝起きで回転が遅い。
とりあえず、パジャマから服に着替えてベッドから起きた。
腹ごしらえをするべく部屋から厨房へと直行。
「おはようございます、陛下。」
ごっつい体格のコックが話しかけて来た。
「あのー…。」
その体格のデカさから思わず腰が引けてしまう。
でも、ちゃんと言わないと。
朝飯抜きになってしまう。育ち盛りの俺に取ったら重大問題だ。
三色バランスよく!ってのが我が家のもっとうでもあるし。
「朝食ならとってありますよ。」
バスケットには丁度良い大きさのサンドウィッチが数個入っていた。
「今日は天気も良いですし、庭での朝食にしたらどうかと思いまして。」
あぁ、それでバスケットにサンドウィッチなのか。
ようやく合点がいった。
「ありがとう!」
バスケットを両手で抱えて俺は庭へと駆け出した。
庭にはココで食べてください!と言わんばかりにテーブルとイスが用意されていた。
色々と疑問に思いつつも取りあえず着席。
戦わないけど腹がすいてはは戦は出来ないので朝食を取る。
いつもの事ながら美味しい。
これを作ってくれたコックに感謝だ。
「一人じゃなければもっと美味しいのに…。」
思わず零れる本音。
そう、コンラッドがいないのだ。
いつだって傍に居るのに。
突然いなくなるんだから。あの時だって…。
コンラッドが俺の元からいなくなってしまった事を思い出してしまった。
思い出したくもない過去。
知らず知らずのうちに込み上げてくる涙。
袖口で目尻を拭い、無理やりサンドウィッチを押し込んだ。
味も何も感じない。
「お一人ですか?」
突然影が覆いかぶさってきた。
ビックリして振り向くと、焦がれたコンラッドが立っていた。
「コンラッドっ…!」
立った拍子にイスが倒れてしまうほど勢いよく立ち上がり、飛びついた。
トクンとリズムよく脈打つコンラッドの鼓動に俺の鼓動がシンクロしていく。
「ユーリ?」
手に持っていた何かを慎重にテーブルに置いた後、ゆっくりと抱き締められた。
伝わってくるコンラッドの温もり。
その愛しさに思わず涙がまた込み上げてきた。
ぐっと息を呑んで耐える。
「どこ行ってたんだよ…。」
震える声でどうにか言葉を紡いだ。
異変に気付いたのか頬に手を添えられて上を向かされる。
七色の輝きを秘めた瞳とぶつかった。
「不安にさせてすみません。」
先程より強い力で抱き締められる。
自分でもどうしようもなくなって、涙が一筋頬を伝った。
「プレゼントを買いに行ってたんです。」
「プレゼント?」
唇で涙を拭われた後、テーブルを見た。
テーブルの上には小さいながらも凝った細工が施されたケーキが載っていた。
てっぺんには何かを乗せるためのスペースが残されたいる。
「そう、ユーリがオレと付き合ってから一周年目のお祝いの。」
そういうと俺を片手で抱き締めなおして何かを取り出した。
よく見るとそれは何か食べ物で出来た白い板と、日本で市販されているチョコペンにそっくりなもの。
チョコペンらしきものの先端を器用に歯で切ると、スラスラと慣れた様子で白い板に文字を書く。
どうやらそれは眞魔国の言葉ではなく英語のようだった。
しかも筆記体。
英語とかそうゆうのが苦手な俺は、無い脳をフル回転させて解読に没頭する。
「Congratulations,the first anniversary!!」
これまた流暢に英語を読み上げる。
訳せば一周年おめでとう!!
あぁ、コンラッドの親密な関係になってから一周年も経つのか。
「そしてコレがオレからのプレゼント。」
左手の薬指に通される指輪。
仄かに輝く蒼い石。
ビックリして見上げるとコンラッドの顔が近付いてきて。
俺はそれに合わせるように目を閉じた。
顎に手を添えられ、触れる唇。
歯列をなぞられてそっと口を開くとコンラッドの舌が侵入してきた。
「んっ…。」
好き勝手に口内を犯されて思わず漏れる息。
その全てが熱に置換される。
やっとの事で唇を離されたが腰砕け状態になって、情けない事にしがみ付いた。
「俺、何も用意してないよ。」
イスに座らされての第一声。
大体、今日が一周年目だって事すらさっき知ったのだ。
「気にしないで下さい。オレが勝手に祝ったんですから。」
「でもっ!」
間髪入れず食らい付くと、唇に指を一本押し当てられコンラッドから苦笑が漏れた。
「それにオレはユーリから、これでもないくらい色々と頂いてます。」
唇に添えられていた指を滑らせて、頬を撫でられる。
その指には俺と色違いの赤い石が埋め込まれた指輪がはめられていた。
「でも、どうしてもというなら、ユーリからの祝福のキスが欲しいな。」
そういうわれたら、嫌だとは言えるわけがない。
俺は席を立ち、代わりにコンラッドを座らせる。
そして腰を折って、その唇に触れるだけのキスをした。
「これからもよろしく。」
「こちらこそ。」
腰を抱かれて、コンラッドの膝の上に乗る。
俺だけの特等席。
本日だけ立ち入り禁止区域の魔王陛下の秘密の花園での出来事。
もう一度だけ俺からキスをした。





こんなサイトですが、何とか一周年を迎える事ができました。
これもひとえに皆様のおかげです。
心からお礼申し上げます。ありがとうございました。
そして、これからもよろしくお願いします。
思い起こせば一年前。
コンユに対するボルテージがMAXに到達し、後先考えずに立ち上げたこのサイト。
右も左も解からないひよっこを温かい目で見守り続けてくださった方々。
何かと助けてくれた友人。
そして、コンユ好きの皆様。
一年前には全く考えも付きませんでした。
まだまだ未熟ではありますが、これからもよろしくお願いします。
このような稚拙なものですが、楽しんでいただけたのなら幸いです。

                     by aya kisaragi