思う事

もし、過去が変えられるなら。
もし、明日が選べるなら。
『もし』なんて限りなく無いに等しいことだけれど。
曖昧すぎて、現実味がないけれど、思ってみたってイイじゃないか。
叶わなくても良い。ただ、思ってみたいんだ。
変えれるなら変えたい。過ちを犯してしまった事を。
選べるなら選びたい。少しでも皆が幸せな明るい世界を。
過去は変わらないモノだ。
過去があるから今の俺が居て。それは誇れるものだけれど、人だから過ちがある。
あの時には解からなかった過ち。
俺の紡いだ言葉が誰かを傷つけてしまうなんて思わなかった。
俺の行動が誰かを苦しめるなんて思わなかった。
どんなに親しくても、信頼していても、他人は他人に変わりなく。
だから通じず苦しんで、だから理解できなくて悲しくて。
それでも前に向かって歩いてきた。
俺の後ろには直線だったり、曲線だったり、はたまたどこかへ迷子になった足跡が沢山ある。
その中にはドロドロでどす黒くて、見たくも聞きたくも思い出したくともないモノが渦巻いている。
所々に涙のシミが、血の痕が点々とある。
もし、変えられたらと思うと止まらない。
誰かを傷つけなかっただろうし、俺も悲しまなかったかもしれない。
でも、それは結果論。
アレがあったからこそ今の俺が居る。
明日なんて解からない。でも、確かなのは、昨日の俺がいるから明日の俺が居るってこと。
過去に誰かを傷つけたかもしれない。でも、明日は誰かを救えるかもしれない。
だから俺は前を見る。
素晴らしい明日を手に入れるために。
だから心に刻む。
同じ過ちを犯さないように自分への戒めを。

「ユーリ。」
こう言ったら悪いかもしれないけれど、不釣合いは白い軍服を着たアンタが俺を呼ぶ。
「馬鹿野郎…。」
カッコ悪いけれど涙目の鼻声で答える。
優しく抱きこむコンラッド。俺の嫌いな敵国の白い軍服に嫌がらせで顔を擦り付けてやった。
鼻腔を擽る香りはコンラッドのもので、それだけアンタが長い間この軍服を着ていた事を思い知らされる。
二度と起こさないこんな事。二度とさせないこんな事。
そう強く思えば思うほど涙は止まらない。
「すみません、ユーリ。」
謝るコンラッドの声が少し遠くに聞こえた。
「謝っても許さないからな。」
裏切られたとアンタを恨んだ俺が許せないからか、素直じゃない言葉が口から出る。
俺が信じてやらなければ、誰が信じてやるんだろう。
「すみません。」
本当に済まなそうに謝るアンタの声がはっきり聞こえた。
触れ合ったところから伝わる鼓動。懐かしい息遣い。
ココにコンラッドが居ると証明してくれている。
悲しくて流れていた涙が、いつも間にか嬉しくて流れていた。
迷惑ながら軍服で顔を拭いて、見上げた。
その先には見慣れた大好きな人の顔。
精一杯笑顔を作って、言ってやる。
「お帰り。」
「ただいま、ユーリ。」
早く帰ろう、俺たちの城へ。
そして見せてよ見慣れたアンタ。
サラサラの茶髪に七色に輝く茶色の目、ピッシリとした皺一つ無いカーキー色の軍服。
そして何より、優しい笑顔と、甘いキス。





マニメ沿いですね。
コンラッド奪還(!?)直後の会話な感じです。
最初はユーリの独白予定でした。
でも、書いているうちにちょっとだけでもコンラッドとの絡みが欲しくなってしまい…(笑)
私はよく、過去を後悔します。
でも、こんな風に思えたら世界が変わるのだろうなぁ…とか思いながら書きました。
こんな風に思って過ごせる人はきっと、素敵な人なんだと思います。
明日の選択肢を増やすために過去を愛すって凄い事ですよね。
と、今回はしんみりっぽく。
なんだかお粗末なモノですみません;;

                     by aya kisaragi