子猫の拾い方

今日、オレは城の中庭で猫を拾った。
ただ、少し変わった猫だった。何故ならその猫は恋人だったから。
「コンラッドぉー。」
パタパタと振られる尻尾は可でもなく不可でもない機嫌を表している。
「ユーリ?」
ゴロゴロと喉を鳴らして擦り寄るユーリの姿は可愛らしいサイズで耳と尻尾が生えている。
はっきり言ってそそられると言うより、保護愛っていう感じのほうが掻き立てられる。
グウェンダルではないけれど、抱き上げて撫でて、赤ちゃん言葉であやしたい。
まぁ、それは行き過ぎだが。
取りあえず足元に擦り寄るユーリを抱き上げて耳を撫でる。
どうやら耳と尻尾にも神経が通っているらしく、撫でると嬉しそうに喉を鳴らす。
「しゅきー。」
「それはありがとうございます。」
呂律が回らないらいが、そこがまた可愛らしく感じられる。
しかし、どうしてこうなったのかまったく解からないので困ったものだ。
耳や頭を撫でてあやしながらこの状況を説明できる人を探す。
「陛下ー陛下ー!どこにお逃げになったのですかー!?」
普通ならば探さないだろう棚の下などを必死に探す教育係を見つけた。
こうなった状況を知っていると見て間違いない。
「ギュンター。」
「あぁ、コンラート!丁度良かった。陛下が…陛下!」
オレの腕の中で抱かれてご機嫌気味に尻尾を揺らす目的の人を見つけて汁を迸りながら駆けてくる。
「やぁ…。」
異様な光景の恐怖からか、ふるふると首を振って拒否反応を見せしがみ付く。
垂れている耳からも本当に恐がっている事が伺えた。
「ギュンター、ユーリが恐がっている。」
号令であるかのようにその声を聞くとピタリと静止した。
そして必死に真面目モードに戻るとまさに猫なで声でユーリに話しかける。
「陛下、お部屋に戻りましょう?ギーゼラにも言われたでしょう。安静にしているようにって。」
「コンリャッド探しに行ったらけら!」
たぶん「コンラッドを探しに行っただけだ!」と言ったつもりなのだろうがやはり呂律が回っていない。
唸り声をあげながらオレの腕に尻尾を絡めて意地でも離れないらしい。
触り心地の良い毛並みが腕を撫で上げる。
「ニャンコダケの毒は治るのに時間がかかるんです。少しでも早く治したいのなら…。」
一所懸命に説得を試みるがまるで相手にしないユーリ。
「安静にしていてもあの毒は治らないだろう?これ以上ユーリの機嫌を損ねても困るだけだから諦めたらどうだ?
しかし、どうしてニャンコダケなんて…。城には生えていないから間違って食べてしまうなんて事は無いだろうし。
一体、どういうことなのか説明してくれないか?じゃないと対処の仕様が無い。」
ユーリを説得する事を諦めさせ、取りあえず説明を求める。
春とはいえ、まだ冷える廊下での長話はユーリの体調を崩しかねないので、ひとまずオレの部屋へ向かった。
紅茶を入れる間は落ちると危ないのでベッドに下ろす。
昔、グウェンダルがクマハチ用に作った服を代理で取りあえず渡した。
やっと尻尾を自由にできた事にご機嫌になったようで嬉しそうに尻尾を揺らして待っていた。
「コンラッドーこれ、尻がスースーする…。」
ただ、あまり気に入ってはいないようだ。
部屋に向かいながら「コンラッド」と何回も連呼して練習していたおかげで言える様にもなった。
オレとギュンターにはストレートを。ユーリにはほぼミルクのかなり温めのミルクティー。
「我慢してください。さぁ、ユーリ。」
ベッドに転がっていたユーリを捕獲して膝に乗せて席に着く。
尻尾が少しくすぐったいのはこの際気にしない事にした。
「あぁ、お労しや陛下。このギュンター、必ず元に戻る方法をお探しいたします!」
紅茶を淹れながら聞いた説明ではどうやらグレタが珍しいキノコだとユーリに渡したらしい。
娘の好意ならばと意気込んで食べた途端、背が縮み耳と尻尾が生えた。
周りの反応に恐怖を覚え逃走。
逃走先でオレが発見、捕獲。
という流れらしい。
「ニャンコダケは自然と治るだろう?そんなに意気込まなくても…。」
「いいえ、お守りできなかったのはこのギュンターの不覚!」
今にも切腹でもしそうな勢いで言い放つとギュンターは部屋を後にした。
ユーリを膝に乗せたオレは追いかける事も出来ず、ただただ去って行く様子を眺める。
「コンラッドー。」
口の周りにミルクを付けながらオレを見上げるユーリは凶悪的に可愛い。
「何ですか?」
ミルクを拭ってやりながら顔を覗き込むとちゅっとキスをされた。
頬を赤らめながら戸惑いがちに上目遣いで覗き込む。
「俺を飼ってくれる?」
予想もしなかった言葉にオレは珍しく同様したのか、はたまた本心ではそう思っていたのか。
とにかくその言葉に素直に頭を立てに振ってしまったのだ。
元に戻るまでという期限付きで。





CP小説で連載物がやりたくて書きました。
猫ユーリネタは好きです。書きやすいですし(笑)
元々、短編ネタで書いてあったのを手直ししたので何だか…;;
取りあえず続くのでお付き合いください。

                     by aya kisaragi