子猫の接し方 |
|
朝日がちらついて目を覚ました。 いつもの時間。 もう少し寝たいのを我慢して起き上がる。 「んっ…。」 艶かしいとは程遠い可愛らしい抗議の声を上げて身じろぐ黒いケモノ。 温もりを求めてオレに擦り寄ると、くんと鼻を動かし相手が誰かを確認する。 オレだと解かったのか安心すると耳を擦り付け、尻尾を腕に絡められた。 そして、また聞こえ出す規則正しい寝息。 少しでも体を丸めて体温を高めようとしている格好は愛くるしい。 「ユーリ。」 眺めていたいのはやまやまだが、いつまでもそうしているワケにもいかない。 その双黒の瞳にオレを映してもらうために呼びかけた。 「起きて下さい、ユーリ。朝ですよ。」 次第に覚醒してきたのか耳が小刻みに動く。 その姿はかなり可愛らしい。 「ユーリ。」 毛並みの良い耳を撫でて目が開くのを待つ。 くすぐるように撫でるとビクと体が跳ねた。 ぎゅっと腕に絡められた尻尾に力が込められる。柔らかい毛並みが心地良い。 反応が楽しくて何度も何度も撫でると耳だけではなく、身体全体が小刻みに震えだす。 「ゃぁ…。」 再度大きく跳ねると目を覚ました。 「おはよう、ユーリ。」 虚ろな目をしたままのユーリにおはようのキスをした。 へたった耳が愛らしい。 「コンラッドぉ…。」 イヤイヤと首を振りつつも、しっかりとオレの首に腕を回す。 そんな矛盾さえ愛しくて堪らない。 どうやら耳と尻尾は神経の塊らしく、触れるだけでもそうとうな刺激らしい。 すっかり縮こまってしまった尻尾を撫でる。 「目が覚めましたか?」 さっきよりも力強くしがみ付いてくるユーリに思わず笑いが漏れた。 「触るなよっ!」 低い声で唸り離れると尻尾を抱き締める。 耳をへたらせて俯くユーリの顔は火が出る程赤かった。 「すみません。つい、ね。」 ポンと頭を叩き、キスをして紅茶の準備をする。 しばらく真っ赤になったままで不機嫌に尻尾を振っていたが、部屋にたちこめる紅茶の香りに、くんと鼻を動かす。 そして、嬉しそうに笑うと着替え始めた。 とりあえず、ご機嫌取りは成功。 ひょんな事から飼いだした恋人のユーリは未だ子猫の姿のまま。 今はとりあえず、この状況を楽しんでいる。 ただ、楽しんでいるのは俺だけかもしれないが。 「できましたよ。」 「あーい。」 一生懸命に服に袖を通すとぴょんとベッドから降り、駆け寄ってくる。 その足取りがまだおぼつかない。 今にも転んでしまいそうで目が離せず、目的地の自分の前まで来るのを何もせず、ただ、じっと見つめる。 当然、何かあった場合駆けつけるような体勢で。 「コンラッド!」 背が足りないので椅子に座ることが出来ないユーリはオレに抱っこをせがむ。 足元でオレを見上げながら両手を精一杯伸ばす姿は堪らない。 抱き上げて思いっきり抱き締めて頬にキスをしてから椅子に降ろした。 誤って落ちる事が無いようにベビーチェアーに座らせる。 何度か目にしたソレをアニシナに頼んで作ってもらったのだ。 もちろん、座らせるだけではない。 そのお楽しみはまた今度。 「熱いから気をつけてくださいね。」 「わかってるよぉ。」 ぷーと頬を膨らませているユーリに渡すのは70%程がミルクの超ロイヤルミルクティー。 もちろん、かなり温め。 こういうちょっとした仕草が子供っぽくて保護欲を掻き立てられる。 普段はいつもと代わりが無いのでギャップの差がクリーンヒット。 オレの理性が試されている気がしてならない。 「おいしい。」 口の周りにミルクのヒゲを生やしながらご満悦の表情でオレを見上げる。 オレの中でまた一つ枷が外れる音がした。 必死に自分を落ち着かせながら口の周りを綺麗にしてあげる。 「はい、終わり。」 最後にキスをして離れると、ユーリの頬は朱色に染まっていた。 「ありがとう。あのさ、降ろして?」 首をかしげながらおねだりする姿は凶器的。オレのなかでドンドン枷が外れていく。 そんな自分を冷静に判断しつつ、ユーリを椅子から降ろしてあげる。 「はい、どうぞ。」 床に降ろそうとすると首に腕が回された。 胸元に頬擦りするユーリ。耳が鎖骨を撫でる。 「ユーリ?」 突然の行動にどうかしたかと心配しながら覗き込んだ。 「オレ、椅子よりやっぱこっちが好き。」 ぎゅーと腕に力を込めて、まさしくしがみ付くユーリ。 一体、いつまでこの生き地獄、蛇の生殺しの状態がつづくのやら…。 オレの理性が持たなくなるまで、そう時間はかかりそうがない。 ![]() 2話目にしてコンラッドの理性が危ういってどういうことでしょう?(笑) そんなに忍耐力がないんですかね。それともユーリがそれだけ危険な存在なのか…。 うちのウェラーさんは2タイプに分かれますね。 腹黒か忍耐力がないか。 どっちにしろ、あまりよろしくない傾向です;; お友達、恋人には遠慮したいタイプですね(笑) 気が付くとユーリがかなり幼児化しているのである意味書きにくい;; 元のユーリが壊れない程度に頑張ります(もう遅い?) by aya kisaragi |