ホワイトデー・パニック1

「シャララ☆素敵にキッス〜。シャララ☆素顔にキッス〜。
シャララ☆素敵にキッス〜。シャララ☆素直にキッス〜。」
口ずさむは国生さゆりwithおニャン子クラブの名曲&季節曲の「バレンタイン・キッス」。
しかし、季節はもう2月ではない。3月の卒業シーズンだったりして。
だからといって、季節外れな恥ずかしい曲を歌っているわけではない。
てか、季節柄の曲を何でもない時に歌う事ほど恥ずかしいものはないし。
?何歌ってんのさ?」
現魔王様ことイトコの有利がかなり不振な目でこっちをみる。
どうやら出来るだけ、近付きたくない、かかわりたくないといった感じだ。
「聞いて分からない?あの名曲バレンタイン・キィッスに決まってるじゃない。」
「イヤイヤ、キッスだろ。キィッスじゃないだろ。」
的確なツッコミを入れてくる魔王様こと有利。
しかし、そんな感心は次の瞬間消えた。
有利の背景に赤い…真紅の液体がその名のごとく血飛沫をあげていた。
お世話係ギュンターの鼻から。
「ひぃぃぃっ!!」
思わず飛びのいてしまった。逃げ遅れた有利はまさしく返り血を浴びた。
かなり悲惨な状況。一面血の海。
そこへ駆けつけてくる美男子3兄弟とお庭番と可愛い可愛い姪っ子。
姪っ子と言っても血縁関係は皆無だけれど。
それでも、有利の娘、グレタは大事な可愛い姪っ子なのさ!
「これは……。」
血の海を見て最初に口を開いたのはコンラッド。
事の成り行きというか、私の些細なミスで婚約者になった美男子3兄弟次男。
状況を見て眉間に皺を寄せるのは長男のグウェンダル。大抵こういうのの後始末は彼に回るからであろう。
そして、キャンキャンわめき立てているのが、三男ヴォルフラム。
「ギュンター!!何度言ったら分かるんだっ!ユーリを見て興奮するな!!」
様を見ても興奮しますよ!」
心外だとばかりに鼻を押さえて叫んだ言葉は、私を寒心させるには十分だった。
何を言っているんだ、この教育係は!!
「そういう意味じゃない!」
さすがに教育係の強烈な言葉に凍り付いていたヴォルフラムが意識を戻し、反論する。
「オレので興奮しないでくれ、ギュンター。」
血を浴びていないかどうか一通り私をチェックすると有利を助けに向かいながら言い放つ。
オイ、誰がアンタのだよ。
てか、ヴォルフは叫んでないで助けろよ有利を。
「しかし、陛下が…陛下が、キィッスなどと…グハッ」
「うわぁっ!」
すぐ側に居たヴォルフラムが新たな血飛沫に悲鳴を上げて逃げ惑う。
スプラッターだなぁ…。
「さ、グレタ。お姉ちゃんと違う部屋に行こう?」
「うんっ!また、アレ教えてくれる?」
キラキラと目を輝かせて見上げるグレタは天使のよう。あぁ、可愛い姪っ子。
こっそりと血の海を越えてグレタの部屋へ向かう。
「姫、まってー。グリエも一緒にいくわ。」
「カモン、グリエちゃん!乙女話に華を咲かせましょう!!」
片手に可愛い姪っ子グレタを。片手に可愛い乙女なグリエちゃんを。
片付けは男どもに任せて女性+αは退却。来るべき決戦の日へ向けて。

「父上〜!」
パタパタと可愛らしい足音を立てて走ってくるのは愛しい愛しい娘のグレタ。
血は繋がっていなくとも、可愛い娘には変わりない。
が、そんな可愛い娘は突然歌を歌いだした。
「明日は特別スペシャル・デイ 一年一度のチャンス OH ダーリン」
「デュワ デュワ」
どこから来たのか、いつの間にかがグレタの後ろにいた。
しかし何故、グレタが「バレンタイン・キッス」を歌っているのか分からない。
可愛いおニャン子風ダンスをヨザックまでも踊っているのが分からない。しかも、妙にセクシー。
分からなくて脳筋族のオレはくらくらしてきた。
「OH ダーリン I LOVE YOU!」
「デュワ デュワ」
客、オレのみのミニコンサートは続く。続くったら続く。
「なんとっ!!」
後方での叫び声は確実にギュンターだろう。多分、のバックコーラスとダンスに当てられたんだろう。
鼻血を出してなければいいけれど。恐くて振り向くことが出来ない。
「これは…?」
流石のコンラッドでもこの状況には驚いているようだ。
てか、この人たちは突然沸きあがってくるから恐い。
「さて、現魔王渋谷有利原宿不利。」
「原宿不利は余計だろ。」
歌い終わったのか、歌うことに飽きたのか。いつの間にか側に居たにビックリする。
この人々は何か特別な術でももっているのだろうか。
「明日は何の日でしょう?」
横目でコンラッドを見ると肩を竦める。
知らないうちに来ていたグウェンダルやヴォルフラムも分からないと言った具合だ。
愛用のデジタルウォッチを見てみると今日は3月13日。
「ホワイトデーキッス」
バレンタイン・キッスのサビに乗せて歌うイトコ。
あぁ、もしかして…。
「明日を楽しみにしているよ!」
「しているよ!」
「しているよん」
上から順に、グレタ、そして何故かヨザックがウインクしてチラシを撒き走り去る。
そのチラシには、
『ホワイトデーは男性が意中の人にプレゼントを贈る日です!!明日はその日!!
みんな、意中の人にプレゼントを贈り新密度を高めよう!!』
と、デカデカと書いてあった。
なんだか、ちょっと違う気がする。
「ユーリ!なんでこんなイベントがあることを言わなかったんだ!」
そして、何故だか文句言われる始末。
グウェンは眉間に皺を寄せて何かを考えていた。
オレって今日運勢が悪いのかな。
コンラッドを見ると…何故だか凄く楽しそうだった。
ご愁傷様、




ホワイトデーネタ。短編の筈がちょっと予定より長くなってしました。
バレンタインデーネタも書きたかったのですが、諸事情によりかけませんでした。
なので、今回は忘れないうちにUP!
とか言っといて、ホワイトデーまでに完結できるのか…;
一応次で終わりの予定。でも、予定は未定。
のハチャメチャな正確は書きやすくて筆(てか、キーボードを打つ手?)が進みます(笑)

                     by aya kisaragi