ホワイトデー・パニック2 |
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3月14日。 ただし、地球時間で。 俺、魔王渋谷有利は悩んでいた。 それも、全て我がイトコ殿が愛娘のグレタをたらし込んで、ホワイトデーを広めたからだ。 そのせいで城中はバレンタインデー並みの飾りつけが施されている。 半日も無い状況下でここまで出来る従者達はかなり凄い。 俺の下でなけでば、もっと適格な仕事が出来ただろうに。不甲斐無いな…。 まぁ、グウェンダルやギュンターがオレの代わりにやってくれてるんだろうけど。 って、それじゃダメだな。 「はぁ…。」 本日何度目かの溜息をつく。とりあえず、この問題は後日として。 「プレゼントって何がイイんだろう…。」 ココは地球でもないからホワイトデー用のプレゼントなんか売ってないし。 しかも、魔族ってなんか妙なしきたりがあるから気を付けないといけないし。 ホント、困り果ててますよ。 と、またも溜息をつくとタイミングよくドアがノックされる。 「はいはーい。どーぞー。」 半分上の空で返答を返す。マジで、今それどころじゃないんですよ。 オレの親父としての威厳がかかってるわけで。 「ユーリ。」 入ってきたのは俺の名付け親のコンラッド。 「お困りですか、ユーリ?」 「あぁ、そうなんだよ。ホワイトデーなんて今まで関係なかったから何あげたらイイか分からなくてさ。」 ポリポリと頭を掻きながらコンラッドを見上げる。 「だと思いました。で、どうです?オレと一緒に街に買い物に行きませんか? 今から行けば、午後までには間に合いますから。」 なんと、思ってみなかった素敵なお誘い。 こんな機会を逃すわけもなく。 「それ、イイね!!」 もちろん乗っかりましたよ。 大事な愛娘のために、今日の仕事はここまで。御用の方はまた明日。 「ふふふ、ついについにこの日が来たわ!!」 「きゃー姫素敵ー。」 ニヒルな笑いを浮かべながら自室で浮かべながら城の状況を見る。 半日という短い間で従者達はなんとも日本のバレンタインシーズンに負けないくらいの飾り付けをしてくれた。 ひな祭りとかもやったら面白かったんだろうな…。 あぁ、やればよかったー。 「なぁにー?何でそんなに不満そうなのー?」 グリエちゃんが何故だかセクシーポーズで覗き込んでいる。 女の私ですらセクシーと感じるんだから男だったら悩殺されるんだろうなぁ。 こう、上腕二等筋が…ね。 「すっかり忘れてた乙女のための祭をやればよかったなぁと。」 「どんなお祭ー?」 愛姪っ子グレタがグリエちゃんの真似をして聞いてくる。これはこれで可愛い。 カツンカツンと鋭利な音が部屋に木霊する。 音の現況を探すが見当たらない。 「それは、このアニシナがお答えしましょう!!」 「うわぁ!」 がばっと後ろから表れたアニシナさんに思わず悲鳴をあげた。 我ながら情けない。 よく見るとアニシナさんは分厚い本を持っていた。 「ひな祭り。三月三日の上巳(じようし)の節句に、女児のある家で雛人形を飾り、菱餅・白酒・桃花などを供えて祝う行事。 けがれ・災いを人形(ひとがた)に移しはらおうとする風習が起源とされる。 という、陛下やリズ様のいた地球の催し事のことです。」 おもむろにその本を開いて読み上げた。 詳しいな。たぶん、嫌がる有利から無理やり聞いたんだろう。 そしてその有利はたまたま辞書を持っていたんだろう。 偶然に偶然が生んだ産物、アニシナちきゅう大辞典。 「聞くところによればリズ様。『ほわいとでー』なるイベントをしているようで。」 「うん。ホワイトデーね。してるしてる。男に貢いでもらおうってイベントよ。 アニシナもグウェンダルに何か強請ったら?あ、魔力を提供しろとか『もにたあ』になれとかダメだからね。」 こう言わないとアニシナさんは絶対に言う。てか、ホワイトデーじゃなくても言ってる。 大辞典を閉じて溜息をつく。 「分かってませんね、リズ様。男になど貢いでもらわなくとも女は生きてゆけます! 男になど頼る必要はないのです!これからは女の時代です!!」 素敵に熱弁を振るった後、何事も無かったようにアニシナさんは去って行った。 「アニシナ素敵ー。」 グレタはアニシナの熱弁に惚れ惚れとした顔をしていた。 可愛い姪っ子はアニシナの毒にやられているようだ。だれかーポーション下さい! 「どうして?どうしてこうなってるの?」 私はこの状況に納得がいかなかった。 「そりゃぁ…祭だからでしょう?」 セクシーお庭番と言ったらこの人、グリエ・ヨザック。 何故だか女装して着飾ってます、この人。 ちなみに格好はこれまた何故だかスリットがパックリ入ったチャイナ服。ただし、もどき。 大腿二等筋と大腿四等筋がチラリズムでドキドキしちゃうね。 「祭って言ったら、みんな踊るの?ダンスパーティー始めちゃうの?社交界っぽくなっちゃうの?」 「まぁ、お偉いさんが集まりますからねー。グリエもよくわかんなーい。」 頬に人差し指を当てて微笑む。鳩胸がこれまたセクシーに揺れた。 ホントに鳩が入っている胸なんてそうそう見れないからしっかりと目に焼き付けなくちゃ。 「でも、ホワイトデーは踊らない。社交界っぽくならない。」 落胆の色を込めて漏らす。ここまでは完璧だったのに。どうして、踊ってしまうんだろう。 とか思いつつ、鳩胸をつつこうと身構える。 後、一cm…。 「きゃー!」 「のわぁっ!」 突然の女性の叫び声に私はビックリして鳩胸に指を突っ込んでしまった。 「ちょっ!」 ビックリした鳩たちがグリエちゃんの胸の中で暴れる。それをグリエちゃんが胸を抱く形で抑える。 一見、突然グリエちゃんがセクシーポーズをしたように見える。 そのためか、視線が集まる。 「ごめんね、グリエちゃん!わざとじゃないの!!こう、ちょっとミスがあって…。」 慌ててグリエちゃんの正真正銘本物の鳩胸を撫でる。 はたから見ればグリエちゃんの胸を揉んでるように見える。 ますます視線が集まる。 「…何してるんですが?」 がっちりと後ろから抱き込まれて何が起こったのか分からず見上げる。 「コンラッド…?」 そこにはいつもと違う、正装をしたコンラッドがいた。 カッコイイ…。 「お楽しみのところ悪いんですが、一緒に来てもらえますか?」 一旦離れ、正面に立つと片膝を床に着き、見上げて手を差し伸べる。 まるで王子様がお姫様にお伺いを立てるかのように。 って、コンラッドは一応元皇太子なんだった。 「え…そりゃもちろんですことですわよ。」 思わず緊張しわけのわからない事を口走ってしまった。 とりあえず、差し伸べられた手を取る。 にっこりと微笑まれ別の場所へとエスコートされていく。 エスコートと言えば聞こえはイイがどちらかと言うと、誘導されていく。 困ってグリエちゃんを見ると……。 とても楽しそうな顔をしていた。 ![]() ホワイトデーネタ短編小説。 短編といいつつ結局3話構成になってしまいました。 はい、次回で最終回です。 今回の話は…なくても良かったのですが、ヨザックとの絡みが書きたかったんです。 無駄に長い小説で申し訳ありません。 あと少しだけ、ご一緒してくださいm(_ _)m ちなみに大腿二等筋と大腿四等筋とは俗称で太腿のことです。 アニメの資料に素敵なヨザックの太腿を見てこれは書かなきゃ!と思い立ったんです。 で、この無駄な話しができたと…。 by aya kisaragi |