ホワイトデー・パニック3

連れて来られたのは中庭。よく、グレタと遊ぶ場所である。
よく来ると言っても来るのはに日中のみ。月が輝く時には出たことはない。
日が当たって輝く花々も綺麗だが、月光に輝くのも魅惑的だ。
「綺麗だね…。」
溜息が出てしまうほど美しい庭に感嘆の声をあげながら辺りを見渡す。
そんな私の手を引きながら腰掛けられそうな場所へと導く。
の方が綺麗ですよ。いつもの格好もらしくてイイのですが、今日の格好はとても魅力的ですね。
は肌が白いから黒が良く映えます。漆黒の瞳と髪とも合いますし。
何よりはあまりスカートをお召しになりませんからね。」
どちらかというと活動的な私はあまりスカートとかワンピースとか着ないのだが、
今日は風呂から出てみると、いつもの服はなく、あったのはバスローブのみ。
ビックリしてメイドさんに聞いてみたら、どっかの部屋へ連れて行かれて。
入ってみたら、アニシナさんとツェリ様がメイドさんを従えていた。
ビックリしているうちにバスローブを剥ぎ取られあれやこれやと着せ替えさせられていた。
イヤ私、このお二人ほどのナイスバディーじゃないので…なんて言う暇もなく。
下着は着てたよ。でも、恥ずかしいよ。身体測定とか憂鬱な子だったから。
で、動揺しいるうちに着せ替えられて、パーティーへと放り出された。
「敬語はやめて。もう、普通でイイよ?」
「じゃぁ、そうさせてもらいます。この服もあまり好きじゃないんですよね。」
襟元を寛げながら苦笑を浮かべる。
きっちりとしていた正装をしていた時も格好良かったが、崩した姿のほうがコンラッドらしかった。
「その正装もカッコ良かったよ。いつものコンラッドとは雰囲気が違って。」
視線を外しながら答えるとコンラッドが嬉しそうに笑う気配がした。
寒さに体を捩ると何かをかけられた。
よく見るとそれはコンラッドのジャケット。
「寒いですか?」
心配そうに見ているコンラッドの顔は有利を守る護衛の時の顔だった。柔らかな感じ。
キラキラと輝くブラウンアイに吸い寄せられそうになる。そんな不思議な力が篭った目。
知らず知らずに手を伸ばしコンラッドの髪をかきあげる。
肩にかけられたジャケットは拠り所を失い軽い土埃をあげて地面へと落ちた。
?」
放たれた言葉は相手を掴むことが出来ず消えていく。
指を滑らせ、右眉にある傷をなぞる。癒えない傷を慈しむように。
。」
言葉を受けてコンラッドの顔を見てみると、先ほどとはうって変わって鋭利な感じだった。
凛とした魅力的な雰囲気が彼の顔立ちを引き立てている。
私はその言葉が何を意しているのかに気づき、そっと目を伏せた。
花々の甘い香りから良く知ったコンラッドの香りへと変わる。
髪に置かれていた手を取られ、繋ぐ。
そして、唇に触れた。
お酒を口にしていたのかほのかにアルコールが香る。
緊張して目をきつく閉じ、手に力を入れてしまった。しまったと思ったときには遅く、コンラッドが微かに笑っていた。
「コンっ…。」
ムカついたので文句を言おうとするが、途中で彼の口によって遮られてしまった。
触れるだけの口付け。けれど、一度目や二度目と違い長いソレ。
戸惑い呼吸を止めていたので離れた瞬間酸素を求めて口を開いた。
「キスしている間も呼吸してイイんですよ。」
「なっ!」
意地悪く囁かれた言葉にかっとなり思わず蹴ってしまった。
軽々とそれを受け流し、力を逃がしきれなかった私を抱き込む。
「目を閉じて。」
抱き込まれた私に抵抗するすべはなく、仕方なく言われたとおりに目を閉じた。
拘束が緩くなり、金属の音が微かにした。
少し上を向くように指示されそれに従うと、ひんやりとしたものが首筋に当たった。
「もうイイですよ。」
目を開くととくに変わった様子は見られなかったが、首筋に手を当てると金属が音を立てた。
驚いてなぞってみると、鎖骨の間辺りに塊があった。
「プレゼントです。バレンタインデーに何ももらってませんけど。」
笑いながら答えるコンラッドに満面の笑みを向ける。
「ありがとう!大切にするね。高かったんじゃない?でも、いつの間に?」
質問攻めにすると流石に困った様子をみせた。
「安物ですよ。今日、陛下…ユーリと城下へ行って買ってきたんです。」
これ以上質問するんじゃねぇとしか思えないスマイルを向けたので質問するのはやめた。
「イイなー城下。私も行きたかったなぁー。」
「じゃぁ、今度行ってみますか?」
突然の提案にビックリする私をよそにドンドンと計画を立てていく。ゴーイングマイウェイだな。
「ユーリの護衛は?」
「ヴォルフがしますよ。」
「そんなんでイイの!?」
イイんですと笑顔で返された。あぁ、イトコ殿よ。魔王陛下よ。
随分と素晴らしい部下をお持ちで。私は関心しましたよ。
「だって、恋人の願いを聞かないわけにはいかないでしょう?
ユーリなら心配しなくても大丈夫ですよ。それよりオレはの方が心配です。
貴女は一度言い出したら聞きませんからね。ヨザックやヴォルフと共にオレを置いて行ってしまうでしょう?」
図星を突かれてギクリと肩を揺らす。よく解かってらっしゃることで。
「オレは少しでも多くと居たいんです。地球に戻ってしまったらしばらくの間会えませんからね。
少しの時間でも貴重なんです。」
忠犬ハチ公かって程忠実な家臣殿は大事な陛下よりも私を選んでくれるそうだ。
嬉しくって言葉も出ませんよ。まったく、キザな人だ。
「さぁ、冷えてきましたから中に入りましょう?」
落ちたジャケットを拾い払うと着る。
その仕草に見とれてしまう。一動作とっても欠点というものがないその格好良さには賞賛ものである。
「それとも踊ってくださいますか?」
突然の申し出に驚きながらも私は差し出された手を取った。
風に乗って聞こえてくるスローな曲に合わせて月光に照らされながらステップを踏んだ。


そう、大切なことは何もかも彼に教わった。
人を愛する方法も。





予定通り3話で終わりました。お付き合いありがとうございました。
一応ラブラブで終わらせたつもりなのですが…;;
締めの言葉は、「お嬢様とは仮の姿!」を弄ってみました。
番外編だから番外編で締めてみよかと…(笑)
てか、たまたま読み直してたので頭に残ってたのですが;;
何かとコンラッドと恋人関係ってのを忘れがち(コラ)になるので強調してみました。
次はこどもの日かな…?(笑)

                     by aya kisaragi