子猫のあやし方

「嫌だ!」
バタバタと小さい手足を大きく振りかぶって暴れる恋人に今、オレはかなり悩まされていた。
「我侭言わないで、ユーリ。暴れたら落ちますよ。」
落ちるという言葉に一瞬怯んだものの、またもや抵抗を始める。
今までなんとも問題なかったのに突然、このアニシナ特製ベビーチェアーが気に食わないらしい。
座らせるまでは全く問題ない。
ただ、ベルトを締めると暴れるのだ。
それはもう、手が付けられないくらいに。
「どうして嫌なんですか?」
結局座らせることが出来ずに膝に乗せて食事をした。
こんな状況で食後に紅茶なんて出来ないのでおあずけ。
これくらいの仕打ち、我侭を言って困らせてくれたんだからイイんじゃないだろうか。
けれど、元々虫の居所が悪かったユーリは拍車をかけて不機嫌になっている。
パタンと別途の上で揺れる尻尾が何よりも心理状況を物語っていた。
「だってアレ、赤ん坊用だぜ!?」
「仕方ありませんよ。今、ユーリに合うサイズはアレくらいしか…。」
キッと思いっきり睨まれたので続きは口の中で呟いた。
いつまで経ってもユーリは不機嫌なままで、いくら頑張ってご機嫌取りをしても直らなかった。
そして今、最終手段を用いようとしている。
先日、猊下がユーリの子猫化の話を耳にして持ってきてくれた、はっきり言ってお節介グッズの中の一つ。
地球のネコ達に効き目抜群、これには目がないというモノ「マタタビ」。
物は試しとは良く言ったものだと思う。
「ユーリ。」
取りあえず不貞腐れている恋人の目の前でマタタビを転がした。
最初こそ訝しがっていたが、次第にトロンとした目つきになり、頬を朱色に染めている。
グルグルと喉を鳴らしながら耳や頬をマタタビに夢中で擦り付ける。
「はぅ…。」
仰向けになってベッドの上で悶えるユーリ。
その姿はいつもの愛らしさより色っぽさを感じた。
ヘタリと垂れた耳がまた、可愛い。
最近、オレの理性が試されている気がする。
「ユーリ、どうしたんです?」
当たり前のことを意地悪く聞いてみる。
案の定、ユーリは朱色に染めた頬で困ったようにオレを見上げた。
「このボール、イイ匂いして好きだけど…なんかヤダ。」
はいと渡されたマタタビをオレは受け取る。
ユーリはユーリなりに何か危険を察知したみたいだ。
オレもこのマタタビにある危険を読み取ったが。
何にしろユーリの機嫌が直ったのだから良しとしよう。
猊下が置いていったグッズはまだ沢山クローゼットの中でひしめいている。
今度また何かあった時に使うのもイイかもしれない。
「コンラッドー。」
頬や首筋に擦り付けられる耳が少しくすぐったいが、それよりも幸福がオレを支配する。
小さい手を精一杯伸ばして首に回す仕草も可愛い。
「何ですか?」
頭を優しく撫でながら問う。
パタリと機嫌よく揺らされる尻尾は時たまオレの腕を掠めた。
「あの椅子さ、座ると尻が痛くて…。クッションか何かが欲しいんだけど。」
控えめにボソボソと喋る。
まるで秘密の会話をしているみたいに。
それより、全くそんな事に気付かなかった。しかし、本当に尻が痛い程度であんなに暴れるのだろうか?
いくら尋ねてもそれしか答えてくれないユーリ。
真相は本人のみぞ知りうる。





子猫シリーズはどうしてだか微エロっぽくなってしまいます;;
それが今の一番の問題点。
やはりいっそうの事、裏を……。
次回は他のキャラを出したいですね。
ツェリ様あたり楽しそう(笑)

                     by aya kisaragi