子猫の鳴き方 |
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いつまでの隠し通せるとは思っていなかった。 大体、目撃者が多かったのだ。 今まで見付らなかった方が奇跡的である。 「コンラート…これはどういう事だ…?」 母親譲りの綺麗な金髪を怒りに任せて振り乱す、オレの弟。 その怒りの矛先がいつ自分に向くかとビクビクしているオレの恋人。 ヘタリとなっている耳が可愛いと思っているオレはかなり不謹慎だと思う。 けれど、本能的にそう思ってしまうのだから仕方ない。 「ユーリがネコ化したんだ。ヴォルフラムだって知ってるだろう?」 よいしょと恐怖で震えていたユーリを抱き上げる。 不安なのかオレの胸元にしがみ付いて、なおかつ尻尾を腕に巻きつける。 その行動が勘に触ったのか思いっきり睨まれた。 「離れろ、コンラート!ユーリはボクの婚約者だぞ!」 オレからユーリを奪おうとするが、ユーリが更に強くしがみ付くのでできない。 ヴォルフラムが悔しそうな顔を浮かべる。 「ヴォルフラム、無理をしたら…。」 どうにかオレから引き離そうとして、腕に絡みつく尻尾を取ろうとした時の事だった。 「にゃっ!」 強く掴まれたのか、それとも元々神経の塊だからなのか、とにかくユーリは短い悲鳴を上げると体を振るわせた。 思いもしなかったユーリの反応にヴォルフラムが固まる。 「大丈夫ですか?」 優しく髪を梳きながらご機嫌を伺う。 下手したらこのまま上様モードになるかもしれない。 素朴な疑問だが、上様モードになったら、やはり長髪にネコ耳・尻尾なのだろうか? 固まっていたヴォルフラムが神妙な顔をしながらユーリを見る。 「何故、ユーリは『にゃー』と鳴くんだ?」 ヴォルフラムのその一言にオレははっとした。 当の本人はきょとんとしている。 「何言ってるんだ、ヴォルフラム。ネコだから『にゃー』って鳴くんだぞ?」 「イイや、ネコは『めぇ』だ。現に今までニャンコダケを食った者も『めぇ』と鳴いていた。」 めぇって鳴いていたんだ…。 どうやらユーリは地球のネコの知識しかないので『にゃー』と鳴いたみたいだ。 当然今までのニャンコダケを食べた者達はこちらのネコの知識しかなかったのだから『めぇ』と鳴いたんだろう。 けれどユーリが『めぇ』と鳴くより『にゃー』と鳴くほうが可愛く感じる。 まぁ、『めぇ』でもいけなくはないが。 「とにかくユーリ。コンラートから離れろ!」 ふんっと鼻を鳴らして怒りを露にするヴォルフラム。 頑として離れない気でいるユーリ。 そんな二人に挟まれているオレはかなり微妙な立場である。 発言にはかなり気を使わなくてはならない。 「……何をしているんだ?」 カツンと靴の音を響かせて部屋の前に立つのはグウェンダル。 この騒ぎを聞きつけて眉間に皺を寄せてやって来たみたいだが、ユーリの姿が視界に入った途端、顔が綻んだ。 それはもう大輪の花が咲き誇ったかのように。 「グウェンだー。」 耳をピクンと動かし、顔を向ける。 一瞬だけ、グウェンダルの顔が緩んだ。 ほんの一瞬だったからユーリは気付かなかっただろうが。 「煩かったか?」 気難しい兄上を気遣うと珍しく言葉に詰らせる。 「イヤ…。」 良く見てみれば、その手にはアミグルミが握られていた。 黒い塊…たぶんユーリの元になる黒猫だろう。珍しくはっきり黒猫だと解かる。 視線に気付いたのか助けを求めるようにオレを見る。 「ユーリ。」 グウェンの登場に目を輝かせて喜んでいるユーリに耳打ちする。 グウェンダルがユーリのためにアミグルミを作って来てくれたみたいですよ。 その言葉に耳をピンと立てて今まで以上に目を輝かせて見る。 腕から尻尾が離れたのに気付いたのでそっと床に降ろす。 「グウェンー。」 ズボンをクイっと引っ張って見上げるユーリ。 ギュンターが居たなら鼻血を迸らせていただろう。 「コレ…。」 背中に隠していたアミグルミをしゃがんでユーリに渡す。 「わぁ…!」 満面の笑みでそれを受け取るユーリ。ぎゅぅっと抱き締める姿をオレ達はただ見守っていた。 あんなに怒っていたヴォルフラムさえ毒気を抜かれてしまったみたいだ。 やはりユーリには不思議な力があるんだろう。 魔力とは別な何かを。 それから数日間、ユーリはオレの事なんかほっておいてアミグルミに夢中だった。 人形を抱き締めて歩くユーリの姿は黒猫の人形が歩いているようだった。 けれど、それだけじゃオレがつまらないので尻尾を摘むなどの意地悪をしていたのは秘密だ。 ![]() ツェリ様とか言っておきながらヴォルフラムになってしまいました…;; 今日、気付いてしまった真実(笑) ツッコミが入らないうちに小説で言い訳。 すっかり忘れてたんです。マ王ではネコが「めぇ」って鳴くの。 今日、ラチェクラやっててヒツジを見て気付きました。 という事でツッコミはなしの方面で!(笑) by aya kisaragi |