子猫の看病の仕方

朝からユーリの行動がおかしかった。
顔も心なしか赤いし、呼吸も速い。目はしっとりと濡れているし、耳がずっとへたれている。
コレは確実に。
「風邪ですね。」
体温計を見てユーリに告げた。熱は37度と少し。まだ微熱だ。
しかし油断は禁物。とりあえずベッドに寝かせた。
「コンラッドぉ…。」
潤んだ瞳、艶やかな唇でオレを誘う。ではなくて、呼ぶ。
しかし、これは誘惑されている意外に考えられないオレはおかしいかもしれない。
服の裾をクイっと引っ張ってオレを呼ぶユーリはやはり苦しそうだった。
「どうしました?」
気休めだが頬を撫でてあげると、気持ちいいのか頬ずりしてきた。
やはり、体が熱い。
ギーゼラはタイミング悪く出かけている。明日には帰ってくるとのことだが…。
安静にすることに越したことはない。
「喉渇いた…。」
コホコホと小さく咳をしながら少し掠れた声で要求を述べる。
コップに水を入れて渡すと危なっかしい手つきで飲もうとするが、上手くいかない。
そして重さに耐え切れなくなったのかコップを持つ手が震えだした。
仕方なくコップを受け取ると、やはりというべきか、ユーリの手は水でびしょ濡れになってしまっていた。
手を拭いてあげる前にユーリは赤い舌を覗かせて舐めてしまう。
余程喉が渇いていたんだと思っていると、いきなり手を掴まれる。
「ユーリ…?」
たぶん今、オレは間抜けな顔をしてユーリを見ているだろう。
それ程なぜ自分が今、ユーリに手を掴まれているのかわからない。
「飲ませて?」
小首をかしげて可愛らしく見上げてくる。ぐぐっとオレの萌えポイント掴むところはさすがユーリというべきか。
と思っているとコップを傾けてオレの手をびしょ濡れにする。
そしておもむろに顔を近づけて、舐めた。
「っ…。」
思わず声が漏れそうになるのを必死に堪えた。その間にユーリは忙しなく舌を動かしてオレの手から水を飲む。
水音と呼吸音だけが部屋に響く。
いけない事をしている気分になってきた。このままだとヤバイかもしれない。
ユーリは今、病人なのだ。というかそれ以前にオレに幼児趣味はない。
そう、相手がユーリだということが問題なのかもしれない。
オレはユーリの名付け恋人だが、今はユーリの保護者代わりだ。
そのストイックな状況がいけないのだろうか。
「もう、コンラッド!」
オレが悶々と考えている間に舐め終えてしまったようだ。
じれったそうに尻尾でシーツを叩く。
そしてベッドに押し倒された。そうしてユーリが小さい体をバタつかせて腹の上によじ登ってくる。
ちょっと重いが、心地よい重さだ。
「俺は水が飲みたいの!飲ませて!!」
手をつけられない駄々っ子のように腹の上で暴れるユーリ。く、苦しい…。
そして何を思ったのか上着を脱がしにかかった。慌てて起き上がろうとすると、キッと睨みつけてくる。
「ユーリ、おとなしく寝ててください。」
言ってみるけれども、おとなしく寝る気配は全くない。
それどころか、強引に上着を取られてしまった。
そして傾けられるコップ。もちろんなかには水が…。 「ちょっ!ユーリ!」
止める前に鎖骨に水が振ってきた。冷たくて思わず身を捩ると首筋に噛み付かれた。もちろん、甘噛だが。
そしてオレがおとなしくなると、音を立てて鎖骨に溜まっている水を飲む。
どうして保護者代わりのオレがユーリの水入れとなっているのだろうか?状況が理解できない。
「おいしぃ…。」
恍惚とした表情を浮かべてユーリは鎖骨に水を入れ、飲むという行為を数度繰り返した。
そして、オレの腹の上で寝息を立てだしたのだった。
「ユーリ!?」
そっと体を起こして見てみると、体を丸めて見事に爆睡していた。
このままだと体が冷えてしまうだろうからベッドに寝かせておく。
オレは、ユーリの涎と水でしっとりしてしまった服を脱ぎ捨ててイスに座った。
「ユーリが風邪のときは誰にも会わせられないな…。」
今日解ったことは、ユーリが熱に犯されると、とんでもない行動にでるということだ。
「とりあえず、後でお仕置きですね。」
健やかな寝息を立てるユーリにキスをして、シャワーを浴びることにした。
なんたって、首周りが酷い状況なのだから。





前回言った、「指で水を飲ます」でした(笑)
これはやはり、小説効果ですね。あれはやらました。
萌えっ!というよりは、かなり…(笑)
今回の裏テーマはずばり「受け君攻め!」でした。
みごと玉砕。なんだかおかしな物になってしまいました。
お仕置きは表も裏も書きたいですね(笑)

                     by aya kisaragi