記憶と学習

目を開けているのかどうかすら解らない程、暗かった。
そこには光なんてモノはなくて、暗闇しかない。
手を伸ばしても何も掴めない。
叫んでも誰も答えてくれない。独りぼっち。
でも、それが普通だった。だから、何とも思わない。
思ってはいけない。望んではいけない。
それが私の罪だから。

暖かくごつごつとした大きな手に包まれて目を覚ました。
それ以外が冷たいから、余計に暖かく感じる。
「目を覚ましましたか?」
覗き込むブラウンアイ。角度を変えるとキラキラと輝いていた。
「…オレの顔に何か付いてますか?」
「いえいえ、全然!素敵なお顔でございますでますよ!」
テンパった。私の言葉を聞いて笑う青年。
初めて会ったのに、どこか懐かしい感じがした。
、どうしてあんな所に?」
…?今、この人、私の名前呼びましたよね?
しかも、呼び捨ててで…。
「あの、私、あなたとどこかでお会いしましたっけ?」
間違っても、私の記憶にこんな美青年はいない。
「…今、なんと?」
青年がいきなり真剣な顔になった。
「え…どこかでお会いしました?って…」
「忘れたんですか…?」
肩を掴まれ目を覗き込まれる。
「オレの事、忘れたんですか…?」
青年の綺麗な瞳に陰が堕ちる。
遠い昔に見たことがあるような。
眠っていた記憶の中の片隅に…そんな感じの。
「姫さんビックリしてますよ、たいちょー。」
オレンジ色の猫っ毛っぽいマッチョな人が青年の事を「たいちょー」と呼んだ。
ちょっとマッチョの人には抵抗があって…あんまり近づかないでー…。
「ヨザックか…。」
どうやらマッチョさんはヨザックというらしい。上腕二頭筋と三角筋が素晴らしいマッチョさん。
「ヨザックですけど、なんか問題でもありますかー?
てか、それより、たいちょーの方が問題ありですよ。」
マッチョ・ヨザックさんは私の頭にポンと手を置き、ねーっと同意を求めた。
ねーって?何の同意を求められてるんですか私?
状況がまったく解りませんよ。むしろ、私がこのたいちょーさんに助けを求めたいですよ。
ってな感じで、たいちょーさんに助けの視線を送る。
「あぁ…オレの名前はウェラー卿コンラートです。言いにくかったらコンラッドでいいですよ。」
通じたー!!私の思い通じたー!!
さっきとは打って変わって人が良さそうな笑顔で言った、たいちょーさんことコンラッドさん。
「あの、コンラッドさん。」
「コンラッド。」
しっかり目を見て言われた。なんか、優しいのに威圧感を感じる。
「コンラッドですよ。」
「こ…こ…コンラッド…。」
なんだかどもって、なおかつ声が裏返ってしまった。
だって、こんな美青年を呼び捨てだなんて!!
人生に何回あるだろうか!いや、ある分けない!
「オレはヨザックですよー。グリエ・ヨザック。」
「ゴリエ…?」
ゴリエってあの、ゴリエちゃん!?
「いや、グリエですって。間違えないでくださいよ、姫さん。」
残念、グリエだった。でも、グリエちゃんってのいいかも。
あーでも…女装してないか…。
てか、今、姫さんって…!!?
「姫さんって?お姫様でもいるの?」
いるなら見たいな…いや、会いたいなお姫様。
「いるのって、あなたですよ、ひーめさん。」
「何で?」
どう見たって、私はお姫様ってキャラじゃないでしょう。
どっちかっていうと、お給仕さんだよ。
「名前、知らないから。そんでもって、相黒だしー?」
「あっ、私、って言います!」
ベッドの上で正座をして、んでもって、敬礼なんかしてみたり。
てか、相黒って何?
姫ねー。OK,OK。」
親指立ててグッドって…なんだか、凄く可愛いんだけど…上腕二頭筋と三角筋が…ボコッって盛り上がってる。
素晴らしいマッチョ具合ですよ。
じゃなくて。
「姫、いらないですよ、ヨザックさん。」
「ヨザックでいいのよーん。」
って言って、抱擁された。筋肉の抱擁。
マッチョはマッチョでも、ヨザックはイイマッチョだなって思ってたら上腕二頭筋と大胸筋が私の呼吸を妨げている。
ものすごく苦しいけど、ガッチリ抱擁されているから動けない。
上腕三頭筋と広背筋も素晴らしいのね。
「おい、ヨザック、そろそろいい加減に…。」
あぁ、神の声が…大胸筋で顔が見えないけど。
を離せ!」
「隊長!独り占めはよくないですよ!!」
ぎゅってさらに上腕二頭筋に力が込められる。
く…苦しい…。
「そうじゃなく、が、死ぬだろう!」
あぁ…私、素敵な上腕二頭筋と大胸筋に抱かれて死ぬのね…。
っっ!!!」
青年の焦りを帯びた叫び声が病室に木霊した。




また、マッチョネタですが何か?
別にマッチョが特別好きなわけではありません。
ただ、ヨザック出すからにはあの、素敵な筋肉美を出したいなって思ってたんです。
ちなみに、「上腕二頭筋」とは「二の腕」で、「三角筋」が「肩の筋肉」です。
そして、「大胸筋」が「胸の筋肉」で「広背筋」が「脇の下辺りの筋肉、胸の横の筋肉」、「上腕三頭筋」が「二の腕の内側の筋肉」です。
…別に筋肉マニアではありませんよ?保健の教科書見ながら書きましたから;;
ヨザック好きです。LOVEです。こんなに早く出たのは愛の力と、陰の圧力ですね。
あの、筋肉美+女装も凄いけど、バンバビア島音頭…即興で歌えた声優さんも凄い…。
あ、学習ってのは人の名前を覚えたことに対してです。
私、人の名前覚えるの苦手なんですよ…今でもたまに間違える…;;
そういや、マ王様でてないなぁ…;
                     by aya kisaragi