今日はマの付く大災難

ずきりと痛む心と頭。
思い出そうとすると、痛む。
ちらりと映る、彼の顔。
どうしてそんな、悲しい顔をするの?
茶色の中の銀が七色に輝き、弾けた。

することが無いので、城内をうろつく。
が、やはり、やることがない。
ギュンギュンに本を借りて時間を潰す事にした。
けれど、文字読めない。
結局することがない。
有利は「お仕事」中で、遊べない。
グリエちゃんもどっか行っちゃった。
他のみんなも忙しそう。
ホント、何でこんなところにいるんだろう。
「つーまーんーなーいー!!!!」
キングだかクイーンだか知らないけど、とにかく大きいベッドの上で暴れる。
私がここを使えるように用意していたメイドが驚いている。
「そんなに暴れないでくださいよ。」
ドアにもたれかかる様に中を覗き込んでいる、コンラッドがいた。
「いっ…いつのまに?」
が叫んでいるときからですよ。」
メイドさんを追い出して、中に入ってくるコンラッド。
よく見れば、メイドさん、顔が赤い。
きっと、好きなんだろうなーとか思ってたらコンラッドに捕まった。
「何っ!?」
「何って…人の話聞いてませんでしたね?」
メイドさんの事考えてたら、話を聞きそびれたらしい。
溜息混じりにコンラッドが説明しなおす。
「お食事会?」
コンラッドは食事会があるから、わざわざ迎えに来てくれたらしい。
そういえば、さっきと違う白い服を着ている。
「それって、正装なの?」
「えぇ。あまり好きではないのですがね。」
ダルそうに首元を緩める。
内緒ですよってちゃめっ気たっぷり、ツユだくで。
どうでもイイけど、いきなりつれて来られた私が正装なんて持っているわけもなく、ラフな服でお食事会へ。
制服と堅苦しいのは苦手だけど、一人ラフってのも嫌だななんて思ってたら、食堂についてました。
「また、トリップしてたんですね。」
コンラッドの笑いの種になる、この癖は一刻も早く直したほうがよさそうだ。
エスコートされて中へ入ると、これまた映画とかでしか見たことのない光景が広がっていた。
有利が嬉しそうに手招きしているとヴォルフラムがキャンキャン騒いでいる。
なんだか、夫婦漫才っぽい。…どっちが夫で嫁なのかは不明だけど。
とりあえず、コンラッドの隣の席に誘導される。
。」
低いテノールが私を呼んだと思ったらすぐ後ろに眉間に皺を寄せた、グウェンダルがいた。
はっきり言って、恐い。
「これを…やる。」
手元にポンと何かを置いて去って行った。
「これは…?」
ライオンなのか熊なのかいまいち解からないアミグルミ。 「あー獅子ですね。可愛い可愛い。」
よしよしとアミグルミの頭を撫でるコンラッドと様子を見ているグウェンダル。
とりあえず、撫でてみる。
グウェンダルが嬉しそうに笑った。
あの、眉間に皺を寄せてたグウェンダルが笑った。
何かが起こりそうな予感。
「あーらっ!可愛い!!」
むちむちボディーの金髪お姉さまがこれまた、きわどいドレスを着て、食事会に来た。
「これが、巫女様?もー可愛いー。」
ぎゅーっと胸が顔にめり込むぐらいに愛の抱擁を受ける。
「母上!!」
哀れに思ったのか、はたまた見苦しいと思ったのか、とにかくヴォルフラムは助け舟をだしてくれた。
ありがたや、ありがたや。
危うく、今度は胸による窒息死を体験するところだった…。
どうやらこの人は3兄弟の母親で前魔王のツェリ様らしい。
ものすごい美人。だから、美形3兄弟ができるのかもしれない。
やっとの事で食事会が始まるが…聞いたことのない料理ばっかりだった。
あの、世界ウル○ンとかで異民族の正体不明の食べ物を食べる人たちの気持ちがわかった。
「食欲、無いんですか?」
さすがに何一つ手をつけない私を心配したのかコンラッドが尋ねる。
有利は慣れたもので、美味しそうに色々頬張っている。
「これって、何?」
目の前に出ているメインと思われるモノを尋ねる。
「あー…そうですね。地球で言うステーキだと思いますよ?」
最後が疑問系なのが凄く気になるところだが、食べないわけにもいかない。
「うまいぞ、。」
もぐもぐ食べつつ進めてくれる有利。
確かに美味しそうに食べている。
「そんな奴に構うな、ユーリ。そんな奴は薄汚い人間混じりのウェラー卿に任せておけっ!」
今、もの凄く、聞き捨てなら無い言葉を聞いた気がする。
「気にしないでください。いつもの事ですから。」
悪口を言われているはずなのに、コンラッドは苦笑するだけで怒らない。
何かがおかしい。
「だいたい、本当にそいつは巫女なのか?ただ、ユーリの親戚ってだけだろう?
どこの馬の骨かもわからない薄汚い女から産まれた奴がか?
ふざけるなよ。僕は認めないからな!」
「オイ、ヴォルフラム!!」
流石に有利が口を挟みだした。
ヴォルフラムが言った言葉が理解できない。
今まで、地球に住んでいて、言われたことがない罵声が浴びせられている。
「ウェラー卿が兄弟って事実だって、虫唾が走るっ!魔力も無くて、兄上とは大きな違いだっ!」
荒々しくテーブルを叩くヴォルフラム。ナイフとフォークが落ちる。
「ねぇ、コンラッド。色々言われてるよ?言い返さないの?怒らないの?」
わなわなと震える手をどうにか堪えて尋ねる。
あんなに言われているのに言い返さないなんて。
「良いんですよ。いつものことですから。」
パンッと高い音が部屋に木霊する。
視線は一点へと集まった。
右手で左頬を叩いた。
「何で…おかしいよ。ヴォルフラムはヴォルフラムでいけないけど…。怒らないコンラッドもいけない。
悪いことをしたら叱らないとっ…それが悪いことだって解からないまま育つんだよ!?
唯一無二の弟でしょ!?父親が違ったって、弟でしょ!?大事なんでしょ!?
大事なら、怒らなきゃ。後で後悔したって遅いんだよ!?いる時に言わなきゃ!!」
本当は大切な誰かに言いたかった言葉。
それすら思い出せない私。
大切な人さえ思い出せない私。
誰にも味わって欲しくない後悔。
だから、私が今、精一杯できる事を頑張る。
何も言わないコンラッドにもう一発と今度は左手で右頬を叩く。
「ねぇ、コンラッド…。頬が痛いでしょ?私だって、手が痛い。でも、それ以上に心が痛い。
それでも、今叩いたことは取り消さないっ。私は間違った事してないって思うから!」
泣かない様に歯を食いしばる。
震える手を頑張って抑える。
「取り消す気は無いのね?」
「取り消すんだ、!」
見守っていたツェリ様が初めて口を開いた。
高めのハイヒールを鳴らして近づいてくる。
前魔王なだけあって、威厳たっぷり。
慌てた有利が取り消す事を進める。
「はい。取り消す気はまったくありませんっ!」
それでも一歩も下がるわけにはいかない。
「そう…。素敵っ!」
「……は?」
あーあと言わんばかりに有利は頭に手を当てていた。
「婚約成立ね!」
婚約?こんやく?コンニャク?
最後のコンニャクは違うとして。 「婚約って?」
意味が解からずきょとんとする私と打って変わって、コンラッドはしまったという顔をしていた。
「姫は今、貴族に伝わる古い慣わしで、コンラートに求婚したのです。
まったく、陛下といい、どうしてそんなに情熱てきなんですか…私は、私は…悲しくて…。」
後はギュンターが号泣してよく解からなかったが、どうやら婚約してしまったらしい。
来て、まだ、1日もたってないんですよ?
なのに、彼氏を通り越して婚約者ですか?
こんなことなら、有利の忠告を聞いておくんだった。
「よろしくお願いしますね、。」
爽やかに微笑むこの顔の下に今始めて、黒い部分があることを知った。
前途多難ですな、自分!!





初めてマ王らしい題名ですね。
てか、題名が思い付かなかったっていうのが本当のところなのですが。
やっと夢らしい展開です。
長かった…。そして、これからはコンラッドとラブラブ生活…。
そして、婚約させるためにヴォルフラムが悪役に…;;
ヴォルフラム、嫌いじゃないんですけどね。
ごめんね、ヴォルフ。

                     by aya kisaragi