まどろむ様に君と

知っているのに遠い感覚は私を包み、ゆるりと回る。
でも、前よりその感覚は近付き、私を優しく包む。
けれど、その記憶は決して解放してはいけない……気がする。
それはパンドラの箱。禁じられた記憶。

海外に行ったら文化差異に気をつけなくてはいけないとは良く言ったものだ。
ご覧の通り私は、その文化差異に陥れられた人間です。
「私はコンラッドにお説教をしてやっただけなのにっっっ!!
何で私が求婚しちゃって婚約なのよ!?文化差異、めっちゃ激しいやん!」
駄々を捏ねる子供よろしく地団駄を踏む。
それを宥めるコンラッドの顔は心なしか嬉しそうである。
「大体、この儀式を知ってたなら反対の頬を差し出すなよ!」
「まさか10代の女性に100歳を越えるオレがお説教をされるとは思わなかったのでね。」
だから警戒してなかったんですよって苦笑していた。
私を落ち着かせるためにコンラッドが紅茶(らしきもの)を入れてくれた。
たぶんミルクティーだと思われるソレを飲むと、なんだか心が落ち着いていく。
沈黙に耐え切れず、そわそわしているとコンラッドがぽつりぽつりと自分の事を話し出した。
「知ってると思いますが、オレはグウェンダルやヴォルフラムと違って父親が人間です。
確かに、貴族にはなれないし、いつか裏切るのではと囁かれたりもしています。
けれど、オレは父親の事を誇りに思ってますし、純魔族ではないけれど裏切ったりなど絶対しません。
オレは陛下…いや、ユーリの臣下です。そして、の婚約者ですしね。」
微笑みかけてコーヒー(らしきもの)を飲んだ。
せっかく感動していたのに、最後にアレを言われちゃ何とコメントしたら良いのか解からない。
「別に…。」
「別に?」
じっとを見つめ話しの続きを待つ。
私はこの目を知っている。遠い記憶が疼く。
「別にコンラッドが嫌いなわけじゃないの。でもね、こっちに来て、まだ右も左も解からないし、
コンラッドの事もまだちゃんと知らないのに、婚約っていうのがイヤなの。」
話し終わるとすぐに残っていたミルクティーを飲み干す。
頬がほんのに赤みを帯びていた。
コンラッドの柔らかい微笑みが消え、いつのまにか緊張さえ覚える真面目な顔に変わっていた。
、はっきり言うとオレは貴女に一目惚れしてしまったんです。」
びくりと一瞬の肩が跳ねた。頬が更に朱色に染まっていく。
「けれど、婚約しくれとはいいません。」
「コンラッド…?」
小動物が警戒するようにじっと見つめ様子を伺う
コンラッドは思わず笑みが零れそうになるのを辛うじて我慢する。
そう、ここで失敗するわけにはいかないのだ。
来てまだ日が浅いのに色々な事がありすぎた。
これでは、当初の目的が達成できない。本末転倒だ。
彼女にはやってもらわなければならない事がある。
オレはユーリとの両方を守らなくてはならない。
どちらも魂のころから知っていて、大事な人だ。
「オレはが好きなんです。」
何も知らない彼女。
本当に愛しい。恋愛感情だってある。
「好き」なのは嘘ではない。
でも、いつか彼女を利用する事になるかもしれない。
そんな自分が憎らしくて、できたらの口からきっぱり言われて諦めたい。
どうしてに恋をしてしまったんだろう。
知らなければ、これから先彼女を苦しめる事など起きないのに。
どうして眞王はオレにこんな苦難を与えるのだろう。
ただ、彼女が好きなのに。
「コンラッド…。」
頬を朱色に染めたはおずおずと上目遣いに言葉を紡ぐ。
自分が恨めしい。
これからを傷つけるのが。
「お…お友達からで…。」
ぎゅっと手を握られると暖かさが伝わってくる。
それとも、彼女と触れ合っていけば何かが変わりますか?
ジュリアを失ってからのオレを変えてくれますか?
「十分ですよ。。」
そっと触れるような口付けをするとこれ以上ないくらいに赤くなった。
変わりたい。彼女を守りたい。
この奥にあるものがいつか凶暴な頭角を現しませんように。
オレはただただ祈るだけ。
まどろむ様に君と。今宵は甘い歌を唄おう。
愛しい彼女と長く幸せに過ごせるように。
「愛しています、。」




なんともいえない話しでした…。 甘くも無い、シリアスでもない。この、未熟さ丸出しの話し。
本当に申し訳ありません;;
内容的には小説の方のコンラッドがシマロンへ行ってしまうのを暗示させる感じですね。
凹む話しを読んだ後に書くもんじゃないということを今日は学びました…。
でも、人を愛すって難しくて、嘘も多いこと。
これからもこの二人には翻弄させますよ(笑)
                     by aya kisaragi